旅順要塞。
この東洋の片隅にある一港湾都市に、明治国家日本の国運がかかっていた。
明治時代。世界中で帝国主義の嵐が吹き荒れていたこの時代、東洋の一小国が追われる羊から追う狼に変貌を遂げようとしていた。
しかし急速な近代化で発展を遂げようとしていた明治国家日本の前に立ちはだかったのが、世界最強の陸軍国・ロシア帝国だった。
両国は朝鮮半島の覇権を巡って対立し、1904年、ついに満州の野で激突する。
しかし超大国ロシアを相手に廻し、ぎりぎりの戦いを繰り広げていた日本軍にとって、喉元に突きつけられた刃となったのが、東洋最大と言われた旅順要塞の存在だった。
連合艦隊が、要塞に立て籠もる旅順艦隊と悪戦苦闘を続ける中、ロシア帝国はバルチック艦隊の東洋派遣を決定。
バルチック艦隊と旅順艦隊の合流を許せば、二倍の勢力に膨れ上がるロシア艦隊に連合艦隊が対抗することは不可能で、そうすれば大陸の日本陸軍は制海権を奪われ本土との連絡を断たれ、壊滅に追いやられることは必至だった。
こうして旅順要塞は、日本陸海軍の、いや明治国家日本全ての命運を賭けた、決戦場となった。
1904年5月、大本営は旅順要塞の攻略のため、第三軍の編成を下令。
第三軍は乃木希典大将を軍司令官に、旅順要塞攻略の途につく。
しかし乃木と第三軍将兵の前に待ち受けていたのは、日本人がその長い歴史の中で誰一人として経験したことがない、苛烈で凄惨な戦いだった。
要塞の奥深く死の牙を研ぐ悪魔の罠。機関銃の斉射で薙ぎ倒される日本兵。ウラーの雄叫びと共に逆襲するロシア兵。
屍山血河の彼方に待ち受けるのは、勝利か、それとも死か!?
日本の歴史始まって以来の凄惨な戦いとなった、旅順要塞攻防戦の全貌を、国産ボードシミュレーションゲームとしてはじめて再現。
ゲームはアバロンヒル社の名作「ストーム・オーバー・アルンヘム」で著名なエリアシステムを採用。
シークエンスは、各プレーヤーが交互に手番を実施し、各手番に行動させた部隊を裏にし、全部隊が裏(行動済み)になるか、両プレーヤーが続けてパスするかでターンが終了する。
そして全ての裏面(行動済み)の部隊を表にし、次のターンを再開する。攻撃は、サイコロを二個振り、火力とサイの目の合計値が目標のエリアにあるユニットと要塞の防御レベルの合計値を上回ったら、損害が発生するというシンプルなものである。
ただしユニットが未行動の敵ユニットの存在するエリアに進入する際には防御射撃を受けるが、防御射撃は何度実施しても行動済みにならないため、火力の高い機関銃は絶大な威力を発揮する。
また、同エリアにある未行動のユニットは防御射撃の火力を加算できるため、日本軍プレーヤーは突入するエリアを事前に砲兵で叩き、敵の防御射撃火力を落としておかなくてはならない。このため砲兵の使い方と結果はゲーム全般に絶大な影響を与える。
歩兵は火力が弱いため、工兵部隊の支援のもと近接戦闘をかけない限り、ほとんど敵に損害を与えることができない。しかし、最後は歩兵部隊が軍靴で土地を踏みしめないと、要塞を占領することはできない。
かくして両プレーヤーは砲兵・歩兵・工兵を駆使し、日本軍プレーヤーは予備(未使用)部隊の投入が、ロシア軍プレーヤーは逆襲に転じるタイミングの駆け引きが、展開を大きく左右する。
ゲームは、5カ所ある勝利エリアの1カ所を占領すれば日本軍プレーヤーが、ゲーム終了までそれを阻止できればロシア軍プレーヤーが勝利する。
プレーヤーは、盤上に殷々と鳴り響く砲声を、28センチ砲の轟音を、咆哮する機関銃を、そして突撃の瞬間を息を潜めて待つ両軍将兵の鼓動を、感じ取ることだろう。
旅順要塞の攻略は、バルチック艦隊の東航に、そして来るべき奉天会戦に間に合うのか!?
帝国の命運は貴官の双肩にかかっている。