長らく絶版状態にあった旧ゲーム.ジャーナル第55号付録の「大日本帝国の盛衰」ですが、この度ASLなどの再販を手がけているMMP社との交渉がまとまり、日米でマップやユニットなどをリファインして発売されることになりました。旧本誌の「信長最大の危機」と名実共に本誌付録ゲームの双璧ともいえるこのゲームは、プレイアブルでありながらも新鮮な視点で太平洋戦争全体をプレイできる、間違いなく国産ゲームでも5本の指に入る傑作といえるでしょう。
本ゲームの最大の特徴とは、軍艦のみでなく船舶全体の運用に焦点をあて、特に近代国家に必要不可欠であり、太平洋戦争の大きな要因の一つである石油の輸送というシーレーンの部分に大きく注目している点でしょう。学研M文庫から再販された名著「海上護衛戦」(大井 篤)などを読まれれば分かるとおり、南方と本土を結ぶラインは非常に脆弱であり、華々しい機動部隊の勝敗よりもむしろシーレーンを守ることができずに船舶の枯渇を招いたことこそが重大な敗因であったことはご存知の通りです。本ゲームでももちろん各拠点の攻撃や防衛を行うのは軍用艦艇と航空機、そして陸軍ではありますが、それを支えるのは燃料、そしてそれを運ぶ船舶なのです。燃料は日本軍のみに存在するファクターですが、連合軍は貴重な潜水艦ポイントを通商破壊に用いるのか戦場にて戦術的に使うのか、のジレンマがあり、また艦艇や陸軍などの移動のための輸送ポイントも序盤は数が限られており、両軍とも限定された輸送能力の中でいかに戦略を立てるのかというのが腕の見せ所となります。
「空軍」
空軍は、敵艦隊、輸送船団の移動を阻止でき、陸戦においてもその存在が戦闘結果に大きな影響を与えるだけに、空母に次いで最も重要なユニットとなるでしょう。基地航空隊のみがZOC(支配地域)持ち、無制限の敵艦隊の跳梁跋扈を阻止できるのです。うまくZOCを貼らないと、いきなり本土を敵機動部隊が攻撃してくるということも大いに有り得ます。また陸上戦闘でも空軍は自動的に防御力に足されますので、重要拠点では空軍が必ず必要となるでしょう。ただし空軍は海上輸送を行わなけ
れば基地間移動が行えず、空軍の輸送を巡っての海戦が大きなウェイトを占める場合があります。空軍は駒があれば分割や統合が行えます。面白いのは、日本軍の空母パイロットの扱いです。開戦時以降10戦力分しか増援で受け取られないのですが、これは別にとっておきます。そのままでは本土におんぞんされたままで戦力にはならないので基地航空隊に変換すると、二度と元には戻りません。しかし損害を受けた日本空母は、その航空戦力値分の母艦搭載可能航空機戦力を消費しない限り、再使用できないのです。台湾沖航空戦で母艦機を消耗してしまった、というようなこともここで再現できます。
「陸軍が占領する」
陸軍は実際に拠点を守る意味があり、ある意味では究極の目的はいかに相手の陸軍を排除して味方の陸軍を目標拠点に送り込むか、ということにあるといえます。少し変わっているのは補充マーカーで、これは好きな数だけ各ターンに受け取ることができ、陸軍と同様に輸送され、ステップロスした陸軍ユニットを補充できます。
「すべてを左右する海上輸送」
ユニットの移動には、海上輸送ポイントを使用します。陸海空全てのユニットの移動にはこのポイントを使います。連合軍はイギリス軍が6ポイント、アメリカ軍は12ポイントから始まって徐々に28ポイントまで増えていきます。日本軍は30ポイントの船舶ポイントがゲーム開始時にあり、各ターンその船舶ポイント分だけ輸送ポイントを受け取ります。船舶ポイントは通商破壊によってどんどん減っていく上に、最大で12ポイントの燃料輸送をも同じくこの輸送ポイントを使うために、燃料かユニットの移動か、という二者択一が迫られます。各ユニットには輸送コストが示されており、基本的には輸送コスト分だけ移動にはポイントがかかります。
「シンプルな戦闘システム」
戦闘はヒットダイス(六なサイ)システムで、基本的に5か6で命中となりますが、それぞれに様々な修正がつきます。各ユニットは基本的には各ターンには1回のみ、いずれかの目標に対して攻撃を行えますが、艦隊砲戦を行う場合のみ、どちらかが全滅か撤退するまで繰り返し攻撃できます。
「港湾/基地」
各港湾にはそれぞれ航空ユニットと海軍ユニットを収容できる上限が決まっており、地形ごとに陸軍ユニットの存在できる上限も決まっています。島嶼は4輸送ポイント分まで、それ以外は8輸送ポイント分までです。