Game Journal.Net ゲーマーによるゲーマーのためのボードSLG専門誌

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GJ NEWS 号外

第4回鈴木銀一郎杯 選考結果発表(2022/3/1)

江戸幕府の黄昏 近藤友樹氏デザイン

 

当杯史上初大賞に輝く!

 

佳作:薔薇戦争 池田康隆氏、堂々四作目の受賞!

両受賞作には海外メーカーからのオファーも
世界進出の登竜門として増す重要性

昨年末、第4回鈴木銀一郎杯の選考がおこなわれた結果、当杯史上初の「大賞」に近藤友樹氏デザインの「江戸幕府の黄昏」(GJ56号掲載)が選出された。当杯における大賞の受賞は、2002年の募集開始以来、二十年めにして初の快挙となった。
近藤友樹氏の受賞は第3回選考で優秀作に選出された「大東亜戦争」に続き2作品連続で、同氏は国内最高のウォーゲームデザイナーの一人として、その地位を不動にしたといえる。
また、佳作には池田康隆氏デザインの「薔薇戦争」(GJ65号掲載)が選出されたが、同氏の受賞は第2回選考における「項羽と劉邦」(優秀作)、「信長包囲戦」「上野戦争」(ともに佳作)に続いて4作目で、今回の結果も実力者が順当な評価を受けた結果ともいえる。
さらに今回受賞した「江戸幕府の黄昏」「薔薇戦争」はともに海外メーカーから英語版/中国語版出版のオファーを受けており、当杯は国内作品の海外出版への登竜門として、今後ますます重要性を増している。

[江戸幕府の黄昏:各委員のコメント]

● ペリー艦隊の来航から大政奉還までの歴史全体の流れをゲーム化するのは意外に難しい。この15年の間に重要な要素となる勢力の立場が大きく変化するからである。薩摩は幕末の最終局面までは基本的には幕府支持派であるし、長州も二度の敗北後は一時的に佐幕派になる。幕末ゲームは、しばしば薩摩の扱いに苦慮し、長州の俗論党(「俗論党」は高杉晋作のプロパガンダだから、幕府協調派あるいは恭順派というべきだろうが)は無視される。この作品には様々な可能性が内包され、そういった流れが無理なく表現されている。カードドリブンは何かが起きるとどうなるかを知るにはいいシステムだが、なぜそれが起きたのかの原因を考えるには向かないシステムであり、このゲームにもそういった意味での限界はあるが、それをいうのはないものねだりだろう。カードドリブンの利点を活用した、幕末史の流れを面白く見せる、スマートでよくできたゲームだと思う。(高梨俊一氏)

●「江戸幕府の黄昏」は私の大好きなウォーゲームの一つです。「Twilight Struggle」は中国でとても人気があります。幕末のテーマとTwilight Struggleシステムを組み合わせるというのは、絶妙なアイデアです。「江戸幕府の黄昏」はTwilight Struggleシステムを使って多くのゲーマーに親しみを感じることができました。Twilight Struggleシステムは抽象的なシステムだと思います。幕末のテーマを再現するためには、イベント・カードが重要なポイントで、こんなに多くのイベント・カードを実現したデザイナー近藤友樹氏の実力に感心しました。私が知っている友達はこのゲームを通じて、日本の幕末を知ることができました。実は、私もそうです。発売当初は、イベント・カードをもとに百度(中国版のGoogleのような検索サイトです)で歴史事件を調べていました。「安政の大獄」「薩長同盟」などの歴史的事件が印象的でした。(王晶氏)

● 氏の最近の作品は皆、海外でデザインされた優れたゲームシステムを噛み砕いた形で提供する事で日本でも普及させようという高い志が感じられる。本作はトワイライト・ストラグル(GMT)をより馴染みやすい日本の幕末に置き換えたもので、ゲームとしても文句なしに面白く、歴史的フレーバーも強い。(山内克介氏)

● 既存のシステムをベースとした場合、独自性を出そうとしてゲームが肥大化する罠に嵌ることなく、ルールやマップデータをスリムにまとめたデザイナーのセンスにより、プレイヤーはストレス無く激動の幕末にはまり込むことが出来ます。唯一追加された“支持マーカー”もプレイヤーの負担なく見事に落とし込まれています。味気ないマーカーばかりの中では、愛おしさすら感じる出来上がりです。まずはイベントカードを並べて下部の解説を読んでみてください、それだけで幕末オタク度が上がるでしょう。それからゲームをプレイするとより楽しめます。終わった時に「もう一度やろうぜ」となる、素晴らしい点が多数あるゲームです。(榊原智明氏)

● 本作は、それまで赤字続きだった弊誌の状況が一転するきっかけとなった「中興の祖」とも言うべき作品です。出版元の立場では「売れたゲームが良いゲーム」だというのは勿論ですが、どのようなゲームが売れるかについては、様々な要因があって事前に予測することは非常に難しいです。しかしながら、その中の一つのパターンとして、「潜在的に大きなニーズがあるのに、適当な作品がまだ出ていないテーマ」の空白を埋める作品があります。本作は、まさにその空白を埋めることによって、日本のウォーゲーム史に残るゲームになったと思います。(呼拉中村)

● 今回の選考対象の中では自身最もプレイ回数の多い作品であり、楽しくプレイさせて頂きました。幕末期というゲーム化するのが難しいテーマを名作「トワイライト・ストラグル」のシステムを使って見事に再現している点を評価ポイントとしました。(森哲史氏)

● 幕末という難しいテーマで成功したゲームはこれまでなかったが、「トワイライト・ストラグル」という定評があるシステムによって、新しい境地を開いた作品。(そんし~浅野氏)

● トワイライト・ストラグルを日本の幕末に置き換えると言うアイデアが成功していると思います。(松田大秀氏)

[薔薇戦争:各委員のコメント]

● 日本ではまだまだ知名度が低い薔薇戦争を興味深いものにする格好のゲームです。こうしたゲームをプレイすると古戦場やゆかりの地に行ってみたくなります。(斎藤洋一氏)

● ヘンリー6世の心身状態に焦点を当てた薔薇戦争ゲームというアイデアと、我が国ではあまり取り上げられないテーマに果敢に挑んだ点を評価した。(高梨俊一氏)

● 日本では馴染みがないテーマですが、個性的なキャラクターを日本のプレーヤーに紹介することに成功している貴重な作品です。(呼拉中村)

● 登場する将軍の引きによって毎回展開が目まぐるしく変わる点が面白いと思いました。(松田大秀氏)

上記以外の対象作品へのコメントは本誌をご参照ください。